プロローグ――群雄たち

4/21
前へ
/108ページ
次へ
「6月の、ハマスタ・・・・・・」 画面に映る御園生と、いつになく真剣な表情の伊勢監督を交互に見比べ、成田は呟く。 ――それは、6月に横浜スタジアムで行われる、都市対抗野球大会・西関東地区2次予選。 そこで今や「天才美少女巨乳投手」として世間を騒がしている御園生のウィニングショット――あの関西の名門「京極ガス」の強力打線をも屠った“懸河のドロップ”を打ち砕け―― 伊勢監督は成田に、そう言ったのだ。 「じょ、冗談でしょ監督!? まあ確かに御園生のドロップは、まあ女子にしてはそこそこイイかもしれないスけど・・・・・・奴のいる、CTR横浜“棒球”倶楽部、でしたっけ? たかがクラブチームでしょ? ウチに当たる前に消えますって絶対!」 成田が小ばかにしたようにそう言うと、伊勢監督は、やれやれ、とばかりに 「・・・・・・CTR横浜“熱球”倶楽部だ、ド阿呆」 と訂正すると、さらにこう続ける。 「まったく、お前も見てただろう・・・・・・“京極ガス”、そして“SES東日本”といった名門企業チームが、その“たかがクラブチーム”に屠られてゆくのを、な」 伊勢監督の言うとおり。 今回のJABA東京スポニチ大会において、横浜の一クラブチームに過ぎなかった「CTR横浜熱球倶楽部」は、美少女投手・カナの好投、主砲・福嶋の好打により、今大会の台風の目となっていた。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加