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「それよりも、だ」
伊勢監督は、再び小ばかにしたような表情に戻り、
「――6月の二次予選までに、お前がウチのレギュラーを取ることのほうが、よっぽど難しいと俺は思うがな」
と成田に向かって言うなり、豪快に笑い声を立てた。
「もう! 馬鹿にしないでくださいよ監督! これでもリトル時代は全国優勝! 女子野球日本代表の世界一メンバーの一人なんスから!」
成田がむくれて言うと、伊勢監督は、
「――そんなことは百も承知だ。そもそも、素質がなければはじめっからお偉いサンの反対押し切ってお前みたいなド阿呆を名門・“北鎌”に迎えたりなんかしてないさ」
と言って、ぷいと横を向く。
「なぁーんだ。監督、なんだかんだ言ってこのアタシを頼りにしてんじゃないスか!」
成田は伊勢監督の言葉に、すっかり気を良くして、不気味な笑みを浮かべる。
すると伊勢監督はすこし不機嫌な声色をつくり、言った。
「勘違いするな成t・・・・・・ド阿呆! そもそも名門・“北鎌”には、お前も含めて素質のない奴なんか一人も居ない」
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