神奈川小戦争

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そして、オーダーの発表を終えるや、追い討ちをかけるように叫んだ。 「いいかど阿呆ども! その胸につけてる“北条の三つ鱗”の誇りを忘れるな!」 北条の三つ鱗。 かつて“神奈川三國志”と言われた頃の、黄金時代のデザインを復刻した今シーズンのユニフォームの胸元を飾る、魚鱗を象った紋章。 それは、北条重工を始めとする旧財閥・北条グループのシンボルマーク。 戦国時代の関東の雄、後北条家を祖とする北条グループにとっての誇りの象徴。 ゆえに、去年まで――会社の正式な野球部ではない、“北鎌クラブ”の時代――は、それを胸に着けることは出来なかった。 それが今年、会社の正式な野球部に復帰し、再び胸に着けることが出来るようになった、誇りの象徴。 その誇り――取り戻した誇りを忘れるな、と伊勢は言っているのである。 「難しいことは考えるな! いつも通り、“北条の戦”をやってやれ!」 伊勢の叫びに、選手たちが有らん限りの雄叫びで応える。 「おう!!!!!!!!」
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