北条の、戦

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一塁側・熱球倶楽部ベンチ。 宮崎監督が今日の先発・野村以下スターティングメンバーを送り出し、試合開始を待つばかりとなっていた。 「なあ新浦よう」 「なんだ?」 俺の呼び掛けに、新浦が面倒臭そうにこちらを向く。 「北条の戦――って、いったいなんなんだ?」 そう問いかけたとき、俺は、新浦の目が一瞬輝いたのを見逃さなかった。 案の定、新浦は嬉々として解説を始めた。 「北条の戦――俺の調べた限り、新生・北鎌は三つの要素で語ることができる。 まずひとつは、監督・伊勢 氏康の絶大なカリスマ性。コレはまあわかるだろう。 もうひとつは、“長槍”と呼ばれる攻撃スタイル。 最後に、“小田原城”と呼ばれるリリーフ陣だ」 ――長槍、それに、小田原城? 「なんじゃそりゃ?」 俺はそう返す。 すると新浦は、 「まあ見てみろ。まずは厄介な“長槍”の穂先が動き出すぜ」 と言って、打席に入るトップバッターの成田を見る。 やがて、主審の右手が高らかに上がり、試合開始を告げる。 「――プレイボール!」
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