北条の、戦

3/12
前へ
/108ページ
次へ
成田が打席に入る。 次の瞬間。 俺たちは呆気に取られることになる。 何故なら、成田の取った構えが、そう…… ……がに股に、腰の辺りで水平に捧げ持ったバット…… ……まさに、辻の必殺技・『種子島式打撃術』そのものだったからだ。 「おいおい、北条の長槍の穂先は盗品かよ?」 俺は半ば呆れたように言った。 すると、 「技を盗むのも戦術の一つだぜ……それにそもそも、若菜……辻だって種子島選手から技を盗んでるわけだし」 と、涼しい顔して新浦がほざく。 一方、グラウンドでは、技を盗まれた当人であるキャッチャーの辻が、成田を一瞥するや、立ち上がってナインに大声で指示を飛ばす。 「“ザ・ウォール”を敷いて!」 次の瞬間。 外野の三人が内野との境まで駆け寄る。 そして、内野の4人が外野との境まで後退する。 内外野の境に隙間なく並べられた人の壁――『ザ・ウォール』の完成である。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加