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……!!
成田の奴、初球から打ちに行ったか!
快音を残し、白球は一塁ライン上を跳ねる。
ライトとファーストが、その球へ駆け寄ろうとした、その時――
「――動かないで!」
キャッチャー辻の声に、二人は動きを止める。
そして、
「――ファール!」
白球は一塁手前で右にそれ、塁審がファールを宣告する。
打った成田が、小さく舌打ちして打席に戻る。
なるほどな。
『ザ・ウォール』“決壊”の決め手――それは、“壁”を構成する野手の一人に狙いを定め、ラインギリギリのファールを繰り返し打つことで疲弊させることにある。
そうして“壁の端”を綻ばせたところで、最後に“変化する打球”で楔を打ち、“決壊”させるのである。
辻の今の指示は、それを防ぐためのものだろう。
これで成田も“盗品”では“本家”に太刀打ちできないことを理解しただろ――
――え?
呆れたわ。
成田の奴。
またも『種子島式打撃術』の構えを取りやがったわ。
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