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ならば、ここは勝負を急いだ方が良いだろう。
バッテリーも同じ気持ちなのか。
辻が何やら出したサインに、野村が大きく頷く。
そして、振りかぶって、投げる。
白球は、成田の眼前で、鋭く落ちる。
――フォーク。
成田はこれを、当てに行く。
――!!
打球は高々と、センター方向に舞い上がる。
平凡な、内野フライ。
「当てに行った結果がこれか……盗品はしょせん盗品だな」
俺は一人呟く。
打った成田は、何故か笑みを浮かべながら一塁へ走る。
所詮は強がりだろう。
センター、セカンド、ショートの3人が、セカンド付近に集まり、落ちてくるボールを待つ。
やがて、落下点付近にいたセンター横谷が、両手を広げ、ボールを迎え入れ……
……え?
ボールは、横谷の真後ろに落ちた。
バックアップのセカンド銚子が、慌ててボールを拾い上げ、一塁へ投げる。
「……セーフ!」
出したくなかった先頭打者が、出てしまった。
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