北条の、戦

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「成田さんに打たれたのは私の不用意な配球のせいです」 マウンド上。 集まった首脳陣を前に、辻はそう言って頭を下げた。 既に三点を失い、しかも未だノーアウトランナー二塁。 この状況を打開するためにマウンド上に集まった俺たちに、まず辻は、この猛攻の切っ掛けとなった成田の不可解なヒットについて謝罪の言葉を述べたのだった。 「成田さんは完全にフォークを狙ってました。 無回転に近い打球を打ち上げることで、打球を空中で"変化"させるために」 なるほど。 無回転に近い球は空中で空気の影響を受けて揺れるなどの変化を起こす。 ナックルボールが良い例だ。 あの女はやはり狙って打ってやがったのだ。 「それよりも、だ」 新浦が口を挟む。 「"長槍"にはどう対応する? このままじゃ幾らでも点取られるぞ?」 そう。 北鎌打線の、中距離のヒットを積み重ねることで得点を積み重ねていく攻撃――"長槍"にどう対応するか。 それに対し辻は、 「配球を変えます。"長槍"をへし折る配球に」 とだけ答え、新浦は黙って頷いたため、話はここでお開きとなった。
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