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夜になっても俺達はやはりだらけていた。
「あー……ご飯まだぁ?」
「じゃあ兎都も手伝ってくれませんかねぇ?」
「はっ? 俺の膝の上で寝ている可愛い子ちゃんが見えないの?」
目の前の楕円形の机にはホットプレートが置いてあり、妹がもんじゃ焼きの生地を作っている。
そんな妹を見てだらけている兄の俺とそんな俺の膝に乗って机に突っ伏している可愛いコロちゃん。
「うさぎって良いなぁ……友達関係とかまったく心配してないんだろうなぁ」
「生地を作りながら言うセリフじゃないだろう妹よ。というか春休み遊びに誘われない兄への当て付けか? ん?」
目をそらすとおもむろに口笛を吹き始めた。
くっ……俺にだって友達はいるんだぞ。二、三人くらい。
今は部活が忙しくて遊びに誘えず、誘われないだけだ。
「まず動物に嫉妬抱くとか人間として末期だよな」
「じゃあ動物を愛してる兎都は人間をやめたんだね」
「コロちゃんと相思相愛になれんなら人間やめてもいいか」
「え……?」
からんっ、と軽い音がしたのでそちらを見てみると……妹が驚きのあまりボウルを手放して生地を地面に落としていた。
「ちょっ、晩ご飯……」
なるべくコロちゃんを動かさないように腕をギリギリまで伸ばしてボウルを直す。
「きもい……!」
「そんな迫真顔で言うな。傷付くだろうが!」
動物愛しちゃ駄目なんですか? そんな法律いつできましたか?
早く人間化したコロちゃんにも人権を寄越せよ。
「はぁ……大体、兎都は私とコロちゃんどっちが好きなの?」
「コロちゃん」
生地をぶっかけられた。
え? 今の俺が悪いの? というかネバネバしよる。
「そこは兄として私を選ぶはずじゃない!?」
「兄にもんじゃの生地をぶっかける妹を選ぶわけないだろ! この駄妹が! リア充爆発しろ!」
「私まだ彼氏いないし! バーカバーカ! アホ兄貴!」
「ごめんねぇ、ペッタンコじゃ彼氏出来ないよねぇ、ドンマイ、わらい」
「ペッタン違う! 私だってBに……ってニャァアアアァァァァ!」
顔を真っ赤にしてじたばたしている妹を無視して風呂に入ることにした。
コロちゃんはこんな状況でも起きないとか、恐るべき寝精神。俺が退いても起きる気配がない。
やっぱり接し方は違えど、俺は小さい妹も大きな妹も好きらしい。
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