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「お兄様は出たから次は妹達が入りなさいな」
さっぱりしたー。もんじゃの生地を洗い落とした時の匂いと言ったら……思い出すだけで気持ち悪い。
「あ、でも晩御飯……」
「そこはお兄ちゃんに任せなさい。晩御飯は俺が作っとくよ」
「えぇぇ……」
おい妹よ、ここは喜ぶ所だろうが。なんでそんな微妙な顔で微妙な反応をするんだ。
「兎都って、料理したことあったっけ?」
「ふっ、ナメるな妹よ。お湯と電子レンジを使わせたら右に出るものはいないと言われたものよ」
「料理のレパートリーは?」
「三分で作るラーメン。お湯を沸騰させてからゆで加減が肝心なラーメン。表記されている時間プラスマイナス五秒で温めた方が美味しいとわかったフリージングフード」
兄が真面目に説明してるのに苦笑いするのやめてくれない? 結構傷付くから。
「で? 今家にはカップラーメンもインスタントラーメンも冷凍食品もないけど? 何を作る気なの?」
「な……!」
三つ中一家に一個はあるはずだろ。
どういうことだ。ふざけるな。それじゃあ兄は何も作れないじゃないか……!
「でも米の研ぎ方はわかるでしょう? 冷蔵庫に余り物だけど餃子と唐揚げがあるから今日はそれにしましょう」
言いながら大きな妹は小さい妹を抱き上げ、風呂場に向かう。
と、少しばかりピタッと止まりこちらを心配そうな顔で見てくる。
「米の研ぎ方は……わかるわよね?」
「妹よ、心配し過ぎだ。というか何? 俺が洗剤とか言うと思った?」
「じゃあなにで研ぐの?」
「水」
「…………」
あれ? なんで正解したのにこんな微妙な空気が出来るの?
「じゃあ後はよろしくね」
「おう」
次こそ妹達は風呂場に向かった。
チッ。あの妹を見返すためにも米を研ぐだけじゃ駄目だな。
なにか前菜とか作ろう。そして妹に言わせてやる。
「うまいっっ!」と!
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