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まずは米を炊く作業から入るとしよう。
えーと……米って……どこにあるんだろう?
「いや、たしか妹は何かボタンを押して米を出して移し変えてたはずだ」
炊飯器がある下になにやら数字が書かれたボタンを発見する。
これにちがいない。いや、合っていなければおかしい。
「……何番だ……なにが正解なんだ」
悩んでいる間に妹が出てきたら、きっとアイツはすべてやってしまうだろう。
それでは意味がない。
「自分を信じろ。妹の誕生日は六月……数字は『3』までしかないから……『2』×『3』=『6』で、『2』と『3』を押そう」
ザラザラー、と米が落ちてくる音。器みたいのを抜きとれば中にはきちんと米が入っている。
「ふふ……ははっ」
俺は超特急で器を持ちながら風呂場へ向かい、扉を開く。
「見ろ妹よ! 俺だって米くらいは……」
ここで想像力を働かせる。今いるのは風呂場。満面の笑みの兄、そして風呂に入ってる妹二名。
「あと……これには訳が……嬉しくてだな……すみませんでしたぁぁぁあああぁぁぁ!」
さっさと退散。殺される前に退散。死ぬ前に退散。
顔を真っ赤にしながら拳握ってる妹見たら逃げるしかない。これ兄の中じゃ当たり前。
「ふぅ……災難だったぜ」
誰だ自業自得だろとか言ったやつは。合ってるから責められないが八つ当たりで殴ってやる。
「米……研ぐか」
炊飯器から器を取り出して、米を移し変えて、水を溜めてこねる。
「白くなんの早いな。最初はこんなもんか?」
米が落ちないようにゆっくり傾け、水を溢して再び水を汲む。
それを十数回繰り返すが……、
「白くなる……いつになったら透明になるんだ?」
未だに米からは白いのが出てくる。
腕の力も限界に近付いてきたところで俺は一旦休憩を挟む。
くそ、こんなことになるなら家庭科の時間ちゃんとやれば良かった。
考えたのも束の間。
必殺兵器『スマホ』に気付いた俺は検索検索ぅをした。ふっ最先端万歳。
「なんだ、透明にはならねぇのかよまったく……えと、水を入れて……器戻して……炊飯ボタン」
完璧だ……初めてでここまで完璧に出来たの俺くらいだろう。
今日は炊飯デーだな。
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