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その後、何度か澄香とのデートを繰り返した。
澄香の事を信じていなかったわけではないが、やっぱり相手の動きが気になる事もあって、
英司の話題を振って反応をみる。
言葉の端々で英司に対する嫌悪感が伝わってきて、内心一人でほくそ笑んだ。
でも、それは最初だけ。
澄香は自分で気付いていないのか、次第に仕事の話しを振れば、英司の名前が出る事が多くなってきた。
まさか澄香が。
いや、そんな筈はない。
自問自答を繰り返す。
そんな日々が続いた頃、澄香からのメールで英司と工房見学に行くと言ってきた。
しかも二日間も。
場所が遠いらしく間違いなく泊まりだろう。
仕事だから仕方ない。
こんな事で口を出すなんて、澄香から小さい男だと思われたくない。
英司の存在が気にはなるが。
『わかった。気を付けて行って来いよ。』
結局、本音をひた隠しにし、澄香を送り出した。
正直、気が気ではない。
最近の澄香の変化もあるから尚更。
澄香が英司と出発した日には、何も考えない様に、朝から仕事に集中した。
自分がこんなに情けない奴だとは思わなかった。
もう溜め息しか出ない。
集中しているにも関わらず、一向に仕事が捗らない。
今日は残業だな。
寧ろ今は好都合かもしれない。
ただひたすら仕事に没頭した。
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