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それでも澄香を気にかけ、甲斐甲斐しく世話をやく英司は気に入らない。
目を見ればわかる。
英司の眼差しには熱がこもっていて、澄香に対する好意を表していた。
やっぱりな。
いくら広斗の後輩であっても容赦はしない。
こうなることも予測済み。
後は引き裂くだけだ。
暫くして、澄香は眠った様で、英司の肩に寄りかかった。
ワザとではないにしろ、苛立ちを隠せない。
努めて冷静に英司に伝える。
『寝たのか?英司、悪かったな。急に呼び出して。』
寝ている澄香に手を伸ばすと、澄香の肩を抱いた英司がそれを遮った。
『澄香さんは俺が送っていきます。翔さんは、そちらの彼女さん送って差し上げたらいかがですか?』
口調こそは穏やかだが、目には怒りの炎が灯っていた。
クソガキの癖に。
今まで忘れていた女に視線をやれば、涙目で見つめてきていた。
面倒くせーな。
思わず出そうになった舌打ちを飲み込み、もう一度英司と視線を合わせた。
『英司が彼女を送ってくれ。自分の女くらい連れて帰るよ。』
そう言うと、ゆっくり距離をつめた英司が、低い声で口を開いた。
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