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やっとの思いで最寄りの駅へと降り立つ。
この二週間、仕事は順調に進んだが、それに逆らう様に気持ちは焦るばかりだった。
早々に会社への報告を済ませ、任せていた仕事の進行を確認し帰路へと着く。
早く澄香に会いたい。
携帯を取り出し、メールを送る。
もう仕事を終えている筈なのに、一向に返信はない。
焦る気持ちを抑えつつ、これから向かう事を連絡し、足を進めた。
流石に、これには応えると思っていたのに、携帯は押し黙ったまま。
チッ。
思わず、舌打ちをして澄香のマンションへと向かった。
大きな荷物を抱えて行くのは、正直辛かったが時間が惜しい。
マンションのエントランスに漸く着き、一旦電話を掛けたが聞こえてきたのは、
無機質なアナウンスだけ。
仕方なく、今着いた事をメールする。
一瞬、出張に出る朝の光景が過ぎり、躊躇したものの澄香の部屋の前へと着いた。
チャイムを鳴らす。
それでも出てくる気配はなくて、合い鍵を取り出す。
頼むから居てくれ。
ガチャリと音がし、ドアを開けた。
『嘘だろ・・・。』
そこには澄香の姿はなく、電気の消えた静まり返った空間だけ。
俺の独り言だけが無情に響いた。
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