10

28/39

260人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
とりあえず、澄香の帰りを待とうと中に入る。 荷物を玄関に置き、電気を付けソファーに身を預けた。 もう何度も訪れている部屋なのに、全く落ち着かない。 部屋にまで拒否されてるように感じた。 もう一度、メールを送る。 どこにいると。 やっぱり返信はなくて、焦燥感だけが襲ってくる。 まさか、また英司といるのか? いや。 寧ろ、あれからずっと、英司といるのかもしれない。 考えれば考える程、深みにはまっていく。 澄香を失うのか? ふと、その思いが頭を過ぎると、心が絶望と喪失感に埋め尽くされた。 そんな想像しただけで気が狂いそうだ。 しかし、何度も連絡を入れても、状況が変わることはなく、結局一睡もしないまま朝を迎えた。 澄香は帰って来なかった。 その事実が、俺の感情を黒く塗り潰す。 許さない。 俺を裏切るなんて。 俺から離れるなんて。 絶対に許さない。 メールを作成する。 勿論、送信先は澄香で、今の心情を隠すことなく入力した。 『俺から逃げられると思うな。絶対に見つけ出してやる。どんな手段を使ってでも。』と。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加