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『澄香、どこにいる?』 愛想笑いさえ出来ずに、無表情のまま麻衣ちゃんに詰め寄る。 もしかしたら、麻衣ちゃんの家で匿っているんじゃないかと、僅かな望みを込めて。 英司と居る事より、その方が数倍マシだ。 だが、その望みも砕け散る。 『え?澄香?仕事じゃないの?』 麻衣ちゃんの所でもないか。 『今日、澄香休みなんだ。』 不思議そうに俺を見る瞳で、嘘を付いていないのは明らかだった。 無言になった俺を覗き込む様に、麻衣ちゃんが少しビクビクしながら口を開く。 『澄香に何かあったの?』 『いなくなった。昨日から連絡もつかないし、家にも帰って来てない。麻衣ちゃんなら何か知ってると思ったんだけど。』 みるみる麻衣ちゃんの顔が青ざめていく。 『いなくなったって!?どうして?』 『俺にもわからない。』 ワザと節目がちに言うと、麻衣ちゃんも俯いた。 『まだ仕事中だから、休憩に入ったら直ぐに澄香に連絡してみる。翔さん大丈夫?』 『ああ。ごめんな。仕事中に。もし澄香と連絡ついたら、俺に電話して。』 走り書きしたメモを渡す。 ゆっくりと背を向け歩き出した。 口角が上がっていくのを、必死に押さえ込む。 麻衣ちゃん、悪いな。 澄香の友達だからこそ、利用させてもらう。 麻衣ちゃんの事だ。 きっと昼休みに必ず澄香に連絡するだろう。 そして何らかのアクションを起こすはずだ。 澄香も相手が麻衣ちゃんなら出るだろう。 さっき渡したメモも、殆どフェイクのようなもの。 この悪巧みを気付かれない為の、小道具にしか済まない。 とりあえず、昼休みまで待とう。 そう思いパーキングに向かった。
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