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そういえば、英司は今日出勤しているのだろうか? 今日は平日で、普段なら出勤していて当然だが、俺みたいに休んでいる事も考えられる。 ミスは許されない。 下準備は入念にしておかなければ。 今度は車を広斗の会社へと走らせる。 着くと直ぐに、メールで広斗を呼び出した。 暫くして、怪訝な表情をした広斗が現れる。 助手席にドカッと座り、口を開いた。 『今、俺もプロジェクトで忙しいから、あんま時間とれねーからな。つーか、お前仕事は?』 『休んだ。』 また眉間のシワが濃くなる。 『は?何で?』 『澄香がいなくなった。』 その言葉に表情が一変する。 『いなくなったって。店は?』 『オープンしてから店に電話したけど、休みだって言われた。連絡もつかない。』 『どうして。そんな。』 考え込む広斗に、一番聞きたかった事を口にする。 『英司は?今日出勤してるのか?』 『倉田?確か、朝から取引先周りだって言ってたけど。』 出勤してるのか。 それなら、大体の予測は出来る。 『そうか。悪かったな。仕事中呼び出して。』 『いや。それよりお前、これからどうするんだ?』 『もう少し探してみるよ。』 『あんま無理すんなよ。寝てねーんだろ?すげー顔してる。俺も心当たり探してみるから。』 『ありがとな。』 そう言って広斗と別れ、麻衣ちゃんの会社の近くに車を停める。 流石に広斗まで利用するのは、正直心が痛かったが、やむを得ないと自分に言い聞かせた。 澄香を手に入れる為だ。 何だってしてやる。 息を潜め、その時を待った。
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