10

33/39

260人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
マンションの裏手に車を停め、英司の部屋がある階へと足を進めた。 エレベーターもあったが、麻衣ちゃんと出くわすことを避けるため、階段を使った。 やっと辿り着いた時、話し声が聞こえ身を潜めた。 そっと顔だけで覗き込む。 澄香! そこには麻衣ちゃんを見送る愛しい人の姿。 やっと見つけた。 先程の怒りよりも、澄香に会えた高揚感に体が震える。 にこやかな顔で、麻衣ちゃんの後ろ姿を見つめる澄香は、俺の視線には気付かない。 澄香。待ってろ。 直ぐに迎えに来るからな。 澄香がドアを閉めたと同時に階段を降りる。 居場所さえわかれば、後は準備を進めるだけ。 麻衣ちゃんから連絡が来る事はないだろう。 元々、澄香の味方だし、今この場に澄香が居るという事は、考えたくもないが、 澄香が英司の側を選んだのかもしれないということ。 もしそうであれば、麻衣ちゃんが、それを応援しない訳がない。 俺の事は良く思っていないしな。 だからといって、このまま引き下がってたまるか。 もう澄香の気持ちなんて、どうでもいい。 俺が側にいて欲しいから、そうするまで。 狂ってるのかもしれない。 それでも構わないと思う程、俺には澄香が必要なんだ。 車に戻り、エンジンを掛ける。 ナビをセットして、車を走らせた。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加