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マンションの裏手に車を停め、英司の部屋がある階へと足を進めた。
エレベーターもあったが、麻衣ちゃんと出くわすことを避けるため、階段を使った。
やっと辿り着いた時、話し声が聞こえ身を潜めた。
そっと顔だけで覗き込む。
澄香!
そこには麻衣ちゃんを見送る愛しい人の姿。
やっと見つけた。
先程の怒りよりも、澄香に会えた高揚感に体が震える。
にこやかな顔で、麻衣ちゃんの後ろ姿を見つめる澄香は、俺の視線には気付かない。
澄香。待ってろ。
直ぐに迎えに来るからな。
澄香がドアを閉めたと同時に階段を降りる。
居場所さえわかれば、後は準備を進めるだけ。
麻衣ちゃんから連絡が来る事はないだろう。
元々、澄香の味方だし、今この場に澄香が居るという事は、考えたくもないが、
澄香が英司の側を選んだのかもしれないということ。
もしそうであれば、麻衣ちゃんが、それを応援しない訳がない。
俺の事は良く思っていないしな。
だからといって、このまま引き下がってたまるか。
もう澄香の気持ちなんて、どうでもいい。
俺が側にいて欲しいから、そうするまで。
狂ってるのかもしれない。
それでも構わないと思う程、俺には澄香が必要なんだ。
車に戻り、エンジンを掛ける。
ナビをセットして、車を走らせた。
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