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後部座席に降ろすと、初めて澄香が泣いているのに気付く。
泣くほど俺が嫌なのか?
あー。イラつく。
それを見ない様に、ネクタイを緩め、澄香に目隠しをする。
ついでに、逃げない様に先程ベッドを運ぶ時に使った、紐を使って手足を拘束した。
『あんま、手間掛けさせんな。』
吐き出す様に言うと、震える声で呟く声が耳に届く。
『どう・して・・、こんな・・。』
聞こえなかった振りをして、運転席に乗り込む。
まだ泣いているのか時々、鼻を啜るような音が聞こえていたが、そんな事も気にせず、
澄香が同じ空間に居ることが嬉しくて、鼻歌混じりに新居へと向かう。
暫くして見えてきたマンションの駐車場に車を停め、後部座席に回り声を掛ける。
『澄香、着いたよ。』
体をビクッと強ばらせながらも、口を開く。
『翔、お願い。これ外して。』
外したら逃げるくせに。
何も答えず、澄香を肩に担いで階段を上り一番奥の部屋へと向かう。
いよいよ、ここからがスタートだ。
期待に胸を弾ませ、中へと入った。
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