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バタン。
ドアの閉まる音を聞いて、ゆっくり目を開ける。
ここに閉じ込められてから、数日が経過した。
翔は毎朝、ここから出勤し、昼休みに戻ってくると、昼ご飯だとコンビニのお弁当を置いていく。
そして仕事帰りに少しずつ、前のマンションから自分の荷物を持ってきた。
だから、この部屋には翔の物が日ごとに増えてくる。
でも私の荷物はない。
傍らに放り投げてある、初日に着ていた無残な服だけ。
手は自由になったけど、トイレにギリギリ行けるぐらいの鎖が、足に巻き付いている。
この状態で、着る服もない中、逃げる事も叶わなかった。
先程、翔は出勤して行った。
それまでの間、寝たふりを決め込むのが、当たり前になってしまっている。
食事も拒否して、無理やり食べさせられる以外は、口にしていない。
婚姻届も頑なに書くのを拒んでいた。
そんな私に翔は、夜に帰宅すると激怒し、殴ったり蹴ったり。
だから私の体や顔に、消えることのない痣が増えていく。
そして、最終的には『ごめん。澄香、愛してる。お前しかいないんだ。』と言いながら私を抱く。
あんなに好きだと思っていたのに、あんなに私を必要として欲しかったくせに、
今の翔に抱く感情は、憎しみを通り越して、最早無に近い。
ぼーっと天井を見上げ、こんな日々がいつまで続くのだろうと思う。
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