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いつもより少し遅めに起きた翔が、ベッドから出て行った。
気付かれない様に静かに溜め息を零す。
苦痛しかない、この生活の唯一ホッとする瞬間。
窓から見える青空を眺めていると、翔が戻ってきた気配に慌てて目を閉じる。
『澄香。最後の荷物取ってくるな?今日は二人でゆっくりお祝いしよう。』
耳元で囁いた翔の言葉を反復する。
最後の荷物?
今日で翔の引っ越しが終わるということだろうか。
お祝い?
何の?
そんな事を考えていると、翔の唇が頬に落ちてきて、体がビクッと強ばるのをなんとか耐えた。
寝返りを打つふりをして、玄関に向かう翔の後ろ姿を見つめる。
私服?
今日は仕事休みなの?
ここに来てから、曜日の感覚がなくて今日が何曜日かもわからない。
もし翔が休みだったら嫌だ。
いつもより長く二人でいなければならない。
現実から目を反らすように、目蓋を降ろし翔が出て行くのを待った。
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