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何か物を置いたような音で目を開ける。
あ。
いつの間にか寝ちゃってたんだ。
ドアを開け放っているのか、久し振りにソヨソヨと風を感じる。
後ろの方では、翔が慌ただしく動いているような気配がした。
そして、また出て玄関に向かって行ったようだった。
いくら玄関から離れているとはいえ、この格好でドアが開いているのは気になる。
だって、あの日から私は何も身にまとってないのだから。
布団を肩まで引っ張り上げ、足を引っ込める。
せめて、この足の鎖さえなかったら、ここから逃げ出せるのに。
窓から見える空を見つめながら、溜め息を落とす。
まさに籠の中の鳥。
そんな事を考えていると、足音が聞こえてきた。
しかも一人ではなく複数の。
体が強張る。
こんな状態では逃げる事も出来ない。
息を殺して、そっと頭まで布団を被る。
次の瞬間に聞こえて来た声に、体がビクッと揺れた。
『澄香!』
ずっと会いたかった人。
忘れもしない英司の声。
急いで布団から顔を出した。
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