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『お邪魔します!』
『待てって!広斗!』
広斗さんの大きな声と、それを止めようとする翔の声が届く。
だんだんと近付く足音に身を竦めると、英司の腕が肩を力強く抱き締めてくれた。
迷わずに真っ直ぐ寝室に来た、広斗さんが目を見開き立ち止まり、掴み掛かるように
その後を追ってきた翔の表情が険しくなる。
『英司!何してる?澄香を離せ!!』
血走った目で手を伸ばした翔の体を、広斗さんが取り押さえた。
その瞬間、英司が私を隠すように前へ出る。
『翔!落ち着け!』
『離せよ!澄香、こっちに来い!』
バシーン。
急に立ち上がった麻衣が翔の頬を平手打ちにした。
『翔さん!これどう言うこと?澄香の事、好きなんじゃないの?』
睨みつけるように、翔の視線が麻衣に移る。
『当然だろ?俺は澄香を愛してる。』
『じゃあ何で澄香は痣だらけなの?どうして、足に鎖が付いてるの?これが翔さんの愛し方なの?
おかしいよ。こんなの。翔さんのしている事は間違ってる!』
涙ながらに言う麻衣の言葉に胸が熱くなる。
それに後押しされるように、英司が口を開いた。
『翔さん。澄香はこんな事望んでない。翔さんだってわかってる筈です。』
『お前に何がわかる。澄香は俺のものだ。誰にも渡さない。澄香もいずれわかるはずだ。
俺といた方がいいって事に。』
ここまで黙っていた広斗さんが、翔を座るように促す。
『翔、とりあえず座れ。お前の気持ちはわかった。次は澄香ちゃんの番だ。澄香ちゃん話せる?』
その言葉に、ゆっくり頷きベッドから降りる。
英司が伺うように視線を合わせてくるのを、大丈夫と笑みを見せ返した。
そして、翔の前に座り、大きく息を吸い込んだ。
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