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『翔。私、本当に翔が好きだった。優しくて、頼りがいもあって、大人で落ち着いてて。
でもね。翔が浮気をする様になって、何度も話し合ったけど直らなくて。
それでも好きだったから、見ない振りしようって思うようになった。
仕方ないって納得しようと思ってた。』
そこで一旦区切り、震える手を握り締める。
今、話さないと何も変わらない。
もう一度、視線を翔に向けた。
『結局、そんな風に思っても消化出来なかったんだけどね。そのうち、翔といると心から笑えなくなってた。
翔は時々、結婚の話しをしてくれていたけど、もうずっと前から翔とは結婚出来ないって思ってたんだ。
だから、翔とは結婚出来ません。私と別れて下さい。』
深々と頭を下げると翔の低い声が届く。
『認めない。俺には澄香が必要なんだ。澄香以外は考えられない。手放すつもりはない。』
突き刺さるような視線。
話しが一向に進まない気がしてきた。
それでも、これが最後だと思えば、今まで言いたかった事、聞きたかった事も、すんなり溢れ出す。
『じゃあ、何で浮気するの?私じゃなくてもいいって証拠じゃない?』
『澄香の気持ちを繋ぎ止めていたかったから。嫉妬したら俺以外の事考えられなくなるだろ?』
『私が傷付いても、それでも良かったの?私は、あれ以来、翔を信じられなくなったし、
翔との未来を見ることが出来なくなった。それが翔が望んだことなの?』
言い終えると静寂が訪れる。
暫くの間、誰も口を開く者はいなかった。
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