11

11/15

260人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
無言のまま英司の車に乗り込む。 どちらとも口を開く事なく、着いた先は英司のマンション。 もう何年も来ていなかった様な、不思議な気持ちになりながらも、英司に手を引かれながら中に入った。 リビングに入った所で、振り返った英司に強く引っ張られ、腕の中に収まる。 『良かった。澄香が戻って来てくれて。』 そう言う英司の体が震えていて、英司も不安だったのだと気付く。 背中に腕を回し、胸に顔を押し付ける。 『英司。迎えに来てくれて、ありがとう。』 更にきつく抱き締められて、少し苦しいものの凄く居心地がいい。 いつからだろう。 こんなに英司の側が一番、安心する様になったのは。 もう少し、このままでいたいけど、思い切って口を開いた。 『ねえ、電話で話した時、最後に言った言葉覚えてる?』 肩に頭を預けていた英司が顔を上げる。 『うん。話したい事あるって言ってたよな。』 頷くとソファーに座るように促される。 隣に腰掛け、ゆっくりと英司を視線を合わせる。 きちんと言葉にしないと伝わらない。 大きく息を吸い込んだ。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加