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無言のまま英司の車に乗り込む。
どちらとも口を開く事なく、着いた先は英司のマンション。
もう何年も来ていなかった様な、不思議な気持ちになりながらも、英司に手を引かれながら中に入った。
リビングに入った所で、振り返った英司に強く引っ張られ、腕の中に収まる。
『良かった。澄香が戻って来てくれて。』
そう言う英司の体が震えていて、英司も不安だったのだと気付く。
背中に腕を回し、胸に顔を押し付ける。
『英司。迎えに来てくれて、ありがとう。』
更にきつく抱き締められて、少し苦しいものの凄く居心地がいい。
いつからだろう。
こんなに英司の側が一番、安心する様になったのは。
もう少し、このままでいたいけど、思い切って口を開いた。
『ねえ、電話で話した時、最後に言った言葉覚えてる?』
肩に頭を預けていた英司が顔を上げる。
『うん。話したい事あるって言ってたよな。』
頷くとソファーに座るように促される。
隣に腰掛け、ゆっくりと英司を視線を合わせる。
きちんと言葉にしないと伝わらない。
大きく息を吸い込んだ。
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