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『英司と出会って、最初は嫌な事言ってくるし、強気で強引だし本当に苦手だった。』 『澄香、あからさまに嫌な顔してたもんな。』 そう言って笑う英司の腕を叩く。 『もう!真面目に聞いて!』 はいはい。と肩を竦める様子に、若干苛立つも深呼吸して話しを続けた。 『でも仕事は的確だし、行動も早いし信頼出来るなって思ってから、少し見方が変わっていったの。 英司はキツい事も言うけど、全部私の為だった。私が逃げていること、本当は向き合わないといけないことを言ってくれてたんだよね。』 そう。 出会った時も、そして車の中で言い合いになった、あの日も。 今、思い返せばわかることだったのに、あの時の私はそれに気付けなかった。 『それなのに、酷い態度をとって、ごめんなさい。』 ゆっくりと英司の腕が肩に回り、頭を引き寄せられる。 いいよ。って言われている様な気がした。 『気付いたら、英司はいつだって私が辛い時には側に居てくれて、私の事を考えてくれてて。 いつの間にか英司と一緒にいるのが一番安心できるようになってた。』 偽る事なく素直に甘えられる存在。 受け止めてくれる安心感。 そして、駄目な所は駄目って気付かせてくれる、本当の優しさを持った人。 私は英司と出会えて本当に良かった。 『英司が笑ってくれると嬉しくなるし、突き放されると悲しくなる。側に居ると触れたくなるし、触れて欲しいと思う。』 英司の瞳をしっかり見据え、震えそうになる声に力を込めて口を開いた。 『私ね。英司の事が好き。』
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