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ピンポーン。 チャイムを鳴らし、扉の前で開かれるのを待つ。 予定の19時を少し回っていた。 手にしている袋を抱え直す。 ガチャ。 漸く開いたドアから、覗いた顔が目を見開く。 ああ。 今日はこっちのパターンか。 『翔、います?』 にっこりと笑顔を見せれば、慌てて中へ迎え入れられる。 『は、はい。』 迎えてくれた初対面の男の横を通り抜ける。 翔が私を自宅へと呼ぶのは、友人達を自宅に招いて飲むときと、関係が切れなくて困っている女が居るとき。 それ以外、ここで会うことはない。 今日はどうやら前者のようだ。 それにしても、先程の彼は今までにないタイプだった。 歳も若そうだったし。 そんな事を思いながら、リビングのドアを開けて中に入る。 『早かったな。』 翔の声に頷けば、隣から知っている顔が口を開く。 『澄香ちゃん、お疲れ様。相変わらず綺麗だね!』 『お疲れ様です。広斗さん。』 笑顔のまま、軽く頭を下げる。 澤村広斗さん。 私の店の取引先でもあり、翔の友人。 翔と付き合うようになってから、仕事以外の時は下の名前で呼び合っている。 何の因果が私と翔が出会う、きっかけとなった合コンの主催者が広斗さん。 会場となったバーで会ったときは、本当に驚いたっけ。 思い出して、ちょっと笑いそうになった。 『ああ。倉田。』 そんな私を余所に、広斗さんが手招きをすると後ろから、先程の彼が顔を出した。 あ。忘れてた。 倉田君が広斗さんの横に座るのを見て、私も翔の横に座った。 テーブルを挟んで向かい合わせ。 口火を切ったのは広斗さん。 『澄香ちゃんとこの担当、これから倉田になるから。』 『えっ?』 急のことで頭がついてこない。 すっかりプライベートだと思っていて、まさか仕事の話が来るなんて思ってなかったから。
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