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それから数年がたち、リンフィーは16歳になった。
どんな人魚より美しく成長したが、両親とちょーさんとしか話したことがないため、少々内向的な性格になってしまった。
そんな娘を心配してか、両親はリンフィーの内向的な性格をどうにかしようと試行錯誤し始めて、半年たった時だった。
「お引っ越し…?」
リンフィーは琥珀色の目をまんまると見開いて両親の言葉に驚いた。
「そうよ、あなたも昔から外に出たいといっていたでしょう?でも、人間の住まう土地の外には出してあげられない。だからね?私たちと同じような人外の方々の住まう土地にお引越ししようと思うの。魔界というのだけれど、そこでなら、私たちもお外に出られるのよ。魔学というところにもいける。」
母親は娘を愛しげに見つめながらゆっくりと説明する。
「魔学って何?」
驚きながらも、興味津々に話を聞いていたリンフィーは、急くように質問する。
「ふふふ。ちょっと待って、今から話すから。でね?その魔界にはね、ここにはない教育機関があるの。それが魔学。あなたに教えられることはお母さんたち全部教えちゃったから、そろそろもっと広いところの知識を得るのもいいかなってお母さんとお父さんで話してたの。それに、あなたにはお友達がいないでしょう?そういうところでたくさんのお友達を作って楽しく過ごすのもたのしいわよきっと。」
ゆっくりと、愛しい娘にわかるようにじっくり時間をかけて説明する。自分たちが得ることのできなかった知識を、娘には多く学んでもらいたい。人魚の中でしか得ることのできなかった知識以上のことを。そして、闇の中で暮らしていた故に少々臆病に育ってしまった娘に、日の当たる場所で笑顔でいてほしい。両親の切実な願いだった。
「俺のことはスルーですか…。そうですか。」
少しむくれたようにつぶやくちょーさんに、母親は慌てて説明する。
「いや、ちょーさんを空気扱いしてたわけじゃないのよ!?リンフィーのことをいつも考えてるちょーさんならわかってくれるかなぁって…。」
「そうそう、ちょーさんはリンフィーのこと何でも知ってるし。」
両親が慌てふためく様子を見て、リンフィーは少し笑う。その姿を見た瞬間、みんなで笑いだしていた。
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