最後の恋の予感?じゃ、なかったみたい

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希春が席を外し、 トイレに行き、 化粧を直し、 座りっぱなしだったから ちょっと歩きたくなり下のロビーに行き、 披露宴会場に戻ろうとしたら広い廊下のソファに 隣りの席の男性が座っていたのに気付いて 希春は近付き、 少し離れて同じソファに座って 男性に話し掛けました。 『戻らないんですか?』 『タバコを吸いにね、出て来たんだけど、お隣さんがまだ戻ってなかったから席に戻る気がしなくなって、ここに落ち着いちゃって』と言うので 『あら、待っていてくれたんだ』 と希春が言うと 『最近、人のモノがよく見えるんです』と意味深な事を男性が言ったので 希春は『じゃあ、私は外れますよ。バツイチで、人のモノではないですからね。酔ってますね。飲み過ぎですよ』と言うと一人で披露宴会場に戻った。 …変な事を言うな、引いちゃうわ、酔っ払いめ、あれは危険人物だわ… しばらくしても隣りの男性が戻らないから気になって希春は廊下に出てみました。 男性はソファで大胆に横になり寝ていました。 『ちょっと、ここは貴方の家のベッドじゃないですよ』と言ってあげたい程、男性は寝入っているように見えました。 希春が近づいて行くと 男性の寝息が段々と激しく聞こえて来ました。 そして、 大きな声で寝言を言いました。 『レイナちゃ~ん、アヤちゃんもいたのぉ~♪やっぱり若い方がイイよなぁ~♪』 … 希春は、親切にするに値しない男だと判断し、この醜態を放って置く事にしました。 回れ右で自分の席に戻りました。 この日の最後の披露宴だったらしく、40分以上長引いていました。 帰りの新幹線に間に合わなくては困るからと希春は、ほとんど知らない親戚に謝り挨拶し、ほとんど知らない新郎新婦にも挨拶し、 披露宴を一足先に退場しました。 一輪の薔薇と引き出物を持ち、 廊下を出て、 ぐうぐうと寝ていた酔っ払いの前を通り過ぎながら希春は …あの直感は恋の予感じゃないわ、危険を察知した悪寒だったんだ… と 再確認して帰って行きました。 もう、二度とその男とは会う事もないと思っていました。 しかし… この後、目覚めた時の酔っ払い男の事を知るのに そう時間は掛かりませんでした。
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