居酒屋 MASA

2/6
前へ
/77ページ
次へ
46才の希春には24才の双子の息子がいます。 5年前に離婚しバツイチになりました。 若い頃に出した処女作がちょっと話題になった事がありましたが、それからは鳴かず飛ばずの売れない小説家です。 今、少し収入がある仕事は月刊誌の小さなコーナーですが、若い時からの知り合いの編集者にお情けでグルメ記事を書かせてもらっていました。 小説は処女作以降は万年スランプでした。 家計を長男にばかり頼ってはいけないと思い、居酒屋MASAでアルバイトを始める事にしました。 長男の秋斗(シュウト)は売れっ子漫画家でかなりの収入があり、忙しい毎日を送っています。 そして稲取家の家計を支えています。頼りになる長男です。 次男の冬真(トウマ)はカメラマンで映画を撮っています。 過酷な労働の割に給料が安い仕事ですがやり甲斐があると言ってます。 女の子にもモテモテで、希春には冬真の本命がどの娘か分かりませんでした。 秋斗は11月30日生まれで、 冬真は12月1日生まれでした。双子だけれど、日にちを跨いで生まれました。 しかも二卵性双生児だったので見た目も性格も似ていませんでした。 しかし、双子の息子達は揃って希春を『マザー』と読んでいました。 幼い頃は『マミー』でしたが、 小学5年生の時から『マザー』になりました。 さて、 今日は居酒屋 MASAでのアルバイト初日です。 店主の将彦は奥さんの翠と看板娘の彩ちゃんと三人でお店をやっていました。 奥さんの翠は数年前に心臓を患い、娘の彩ちゃんがお店を手伝うようになっていたんですが 彩ちゃんもお嫁に行く事になって、お店には毎日手伝いに来るそうですが今までみたいには働けないので 求人の貼り紙を出したところ、 ちょうど仕事を探していた希春が貼り紙を見て、その場で面接、採用となりました。 一週間前の事でした。 希春がMASAで働く事が決まった直後に奥さんの翠の病状が悪化し、入院してしまいました。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加