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無難な、どうでもよさそうな柚多夏の感想に希春の緊張は解けました。
…まあまあなんだ…微妙…
柚多夏の感想はまだ続いた。
『酒が強くてね。その人のペースで飲んでたら俺潰されちゃって、寝不足だったせいもあったけど、廊下のソファで寝ちゃったんだよね。俺も年だね』と柚多夏は話しました。
店主の将彦がまた聞きました。
『珍しいね。佐城さんだって強いのになぁ。記憶はあったのかい?』
『寝ちゃう前と後の記憶はあるんだけど、流石に寝てる時の記憶はないね、爆睡してたよ』と柚多夏は答えました。
希春は柚多夏の無防備な寝姿と
あの意味深な発言と
あのハッキリした寝言を思い出しました。
…あら?アヤちゃんって、ここの彩ちゃんなんだわ…彩ちゃんには婚約者がいるから、この人は振られたんだ。でも、レイナとも言ってたな、誰かな?…
柚多夏自身も知らない寝言の事を希春が知っていたから、弱味を握ってる様でちょっと趣味が悪いけど優越感でした。
『そのまあまあな女性とはどうなったんです?』と店主将彦が話を希春の事に戻しました。
希春の背中がまた緊張しました。
『それが、寝ちゃってる間に帰ったみたい。多分、新幹線の時間があったんだな。田舎の披露宴って長くて、予定より1時間以上延長してたよ。俺は寝ちゃったから新幹線に乗り遅れたけど、前売り買ってたから損したよ。その人も横浜から来たって言ってたし、先に帰ったみたい。寝てなかったら同じ新幹線で帰って来たかもね』と柚多夏が答えました。
店主の将彦が
『惜しい事したね』と言うと
『うーん、そうでもないかな』と柚多夏が答えました。
『まあまあなんだろ、バツイチは嫌かい?』と店主将彦がまたまた余計な事を言い出しました。
バツイチの希春の前で…
『うーん、人妻の方が…楚々られるね』
希春がバツイチだとは知らない柚多夏がニヤニヤと答えました。
…知ってます…
と希春は心の中で答えました。
『人妻かぁ、手ぇ出したら案外怖いよ。色んな意味で』
店主将彦が意味あり気に言って
『希春さんはバツイチだったよな。』といきなり振って来ました。
さっきまで希春の存在を忘れているかの様に話していたのに…
『え?はい。大将は人妻に手を出した事があるんですか?』
と 希春は話を店主将彦の方を振り返り見ました。
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