来城

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クリスの家は、父親のブーストと二人家族。クリスの母親のアリスは、クリスを産んでから病に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまった。最初のころ、ブーストは悲しみに打ちひしがれていた。産まれたばかりのクリスをほったらかしにして、酒に溺れていた。しかし、ある日を境に、また働き始めた。きっかけは、クリスのおばあちゃんの、ハピナだった。ハピナは、ブーストにこう言った。 「ブーストさん、アリスはあんたに、クリスをたくしたんだ。それなのに、クリスをこのままほったらかしにしていたら、あの子は死んじゃうよ。娘に死なれ、孫にまで死なれたら、あたしはもう生きていけないよ。できる限りのことは、あたしが何とかしてあげるから、あんたもしっかり働いて、クリスの世話をしてやっておくれよ」 ハピナの話を聞いている間中、ブーストは体に似合わない声で泣いていたという。そして、次の日から、また働きだしたのだった。 ブーストの仕事は、巨体を活かした、刀鍛冶だ。ブーストは、クリスに自分の職業を継がせなくてもいいと考えている。なぜなら、鍛冶屋になるための苦しい修業をさせるのは、かわいそうだと考えているからだ。 俺は一階まで下りきった。いい匂いがしている。
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