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(…まただ。俺が何かしただろうか)
彼、下條祐(しもじょう たすく)はある1人の生徒に悩まされていた。ふと視線を巡らすと、いつも彼を睨んでいる奴がいる。中学の頃はだいぶヤンチャをしていたと噂され、現在もそういった雰囲気を持つ男、松永。対峙してみると、上背があるためか威圧感を人に与え、恐れられる存在だ。
その松永に、睨まれる、彼。下條と言えば特に問題を起こすことなく成績もそれなりを保ち、先生に従順。貼られるレッテルは「優等生」。真面目が取り柄で面白味が無い、と言われているようで彼はその言葉は好きじゃないが、周りの評価として受け止めている。好まれもしなければ嫌われもしない。なのにどうしてだか、松永はいつも下條を睨んでいるのだ。流石に気になるんだけど、話しかける勇気はない。そういうわけで彼は気にしつつも触れない日々を送っていた。
*
「…あ」
思わず声が溢れ、慌てて口を塞ぐ。放課後。図書委員を務めている下條は、図書館で本の配架を行っていた。その途中で、見知った横顔を見つけたのだ。
脚立に座り、大きな体を丸めて本を読んでいる松永。図書館には不釣り合いな風貌の彼なので、意外に思う。
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