鬼も福も一回外出ろ

2/2
前へ
/310ページ
次へ
「間宮、恵方巻き作ったんだ。食べるぞ」 菅沢は意気揚々と太巻きを間宮に 差し出した、節分の夕食。 「あぁ…節分か。マメだなお前。 方角はどっちだ?」 「今年は東北東だから、こっち。 願い事を思い浮かべながら無言で食べる のがルールらしいぞ」 「へぇ…願い事なんてすんだな」 なんの不信感も持たず間宮は口を大きく 開けてモキュッと恵方巻きを頬張る。 目を閉じて何かを念じ、両手で太巻きを 支えながら必死に食べ進めていった。 その姿を真剣な目でジッと見つめる菅沢。 「願い事を終えたら喋っても良いらしい」 「…早く言えよ」 あー顎が疲れた、と間宮は休憩を挟む。 「つか真剣に見過ぎだ。どうせエロいこと 考えてんだろ」 「あぁ、考えてたさ。何のために恵方巻を 作ったと思ってんだ。男のロマンだろ」 「恵方巻き会社に謝れまれ。 小さい無邪気な子どもたちに土下座しろ」 「黙って次は俺の恵方巻き咥えろよ」 「あぁん?こんなにデカくて太いもんが 他の何処にあるんだ?見当たらねぇな」 「…てめぇ、言ったな」 「そんなお粗末なんで俺が満足すると 思うなよ。お前が咥えろ」 「俺のなにがお粗末だって?! お前なんかちくわサイズだ馬鹿野郎」 「お前なんか国産バナナだ!」 「なんだと?!試してみるか?!」 「受けて立ってやるよ!」 「ちなみに願い事何にしたんだ!!」 「来年もお前と一緒に いられますように、だ!この竹の子!」 「どんだけお前は可愛いんだこのキノコ! 抱き締めんぞ!」 …こうして夜は更けていく。 終われ
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加