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君とアバンチュール
「ねぇねぇ、葵さん。チョコは?」
「…そんなもんねぇよ」
ぐつぐつとカレーを煮る葵を見つめる。
「え、今日なんの日か知ってるよね?」
「聖ヴァレンティヌスが処刑された日」
「それ起源じゃん…」
(葵さんに期待した俺が馬鹿だったか。)
そりゃ、葵さんと半ば強引に付き合い初め
まだ一度も好きと言われた事はないけど!
この頃は結構良い雰囲気だと
思ってたのになぁ。
「カレー出来たぞ」
コトン、と葵さんが俺の前に皿をおく。
…同じ茶色のものだけどさ。
スプーンで掬って口に運ぶ。
「葵さん料理上手だよね」
「カレーくらい誰でも作れるだろ」
「この前はハンバーグ作ってくれたし」
「お前が作らねぇだけじゃねぇのか?」
ちょっとトイレ、と立ち上がった彼を見て
俺も水を飲もうと腰を上げた。
ふふふ~ん♪と鼻歌を歌いながらキッチンに
入る。何気なく、隅にあるゴミ箱に目線が
いった。
「…こ、これは?!」
固まる俺を用を足し終えた彼が見て
しまった、という顔をする。
「そ、それは…その俺のカレーにはいつも
隠し味に入れるんだ!たまたまだぞ!今日
はカレーが食べたいなって思って、」
嘘をつこうとすると、饒舌になる葵さん。
「…お返ししなきゃ」
こんな可愛い人を放っとくわけには!
「ちょ、待て待て待て待て待て。
ほ、ホワイトデーはまだだぞ、ッ!」
(『おい、明日は赤飯だ!用意しろ!』
『押すな押すな、見てるのバレる!』)
end
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