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朝陽など、もう二度と昇らなければいい
勝手な願望を内心に呟きながら、寝息を
立てる胸に頬をそっと押し当てる。
微かに鼓膜を震わす鼓動に己の其れを
重ねて、俺もまた眠りに就いた。
…
「おい起きろ」
寝起き特有の掠れた怠そうな声が俺の耳
を震わせる。目を開けると、正臣は上体を
起こして寝ている俺を見ていた。
ーあぁ、朝がきてしまった。
「…いま何時?」
「7時半だ。今日の授業はどうする」
「授業よりも書類やらなきゃ。会長は?」
「俺もそうする。朝飯は頼んどいたから
その間にシャワーでも浴びてこい」
そう言って正臣はベットから出ていく。
爪痕がついたその背中に手を伸ばしかけた。
ハッ、となって、すぐに手を引っ込める。
(…ダメでしょ、俺)
情事後の気怠い体に鞭をうち起き上がる。
部屋の冷気が何も纏っていない俺の体を
震わせた。軋むベットから抜け出す。
床に足をつけると歩くたびに、ペタリと
足裏が張り付く音がした。
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