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俺は渋々、彼に黙って従う。
「…そうです、良い子ですね。
いつも頑張ってる、だから
良いんです。休んでも。」
子供をあやすような彼の言葉と俺の髪を
撫でる大きな掌から、彼の体温が
じわりじわりと伝わって。
いつのまにか暖かい眠りについていた。
…
意識が浮上してくる。
俺はなにやら近くにあった温かいものに
抱きついた。
「お目覚めですか?
スリーピングビューティー。」
額に一瞬、不思議な感触。
「…ん、」
目を開けると、また鳶色。
もう夢なのか夢じゃないのかは
眠り過ぎて良くわからない。
でも、良くわからないが
とても幸せだし、居心地が良いし
気持ち良いし、多分これは夢なんだろう。
こんな楽園にいるみたいな感覚。
「…白鳥、会長。
そろそろ起きなきゃヤバイです。
離して、お願いです。
トイレ行きます、行きたいんです!」
彼の決まりの悪そうな焦ったような声。
…む。
夢なんだから黙ってればいいのに。
「夢じゃないですってば!」
「…え。」
声に出てたらしい。
じゃあこの素晴らしい環境は
現実ということだろうか。
「ほら、朝です!7時です!」
目覚まし時計を必死で俺に見せながら
彼は強制的に俺の手を自分の腕から外した。
あのなにやら暖かいものは彼の腕だった
ようだ。
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