こちら、放送局2

4/5
前へ
/310ページ
次へ
空になった弁当箱を手早く片付ける。 ここにいるのは限界だった。 「僕、用あるんでもう行きますね。 先輩方ゆっくりしてって下さい」 そう言って立ち上がると、松崎先輩は少し 焦ったようにこちらを見た。 「え、おい、待てよ」 「へぇ、そうなの?もっと森野くんとお話し してみたかったんだけど、残念だなぁ。 …また、一緒にご飯食べようね?」 「ええ、楽しみです」 白々しい宇野先輩の言葉。 僕はお返しに上辺だけの笑みを。 「じゃあ、また」と2人に背を向けて 足早にその場から離れる。 膨れる悶々とした思いを抱えながら。 … 裏庭を歩きながら、溜め息を吐く。 心配と不安で胸が張り裂けそうだった。 (だってすごく仲良さそうだったし、2人 とも名前呼びだったし) もしかしたら、という不吉な思いが僕の こころを埋め尽くす。 「あれ~コンじゃん。そんな暗い顔して どうしたのォ?」 「おい、コン。一人でこんなとこ歩いて たらダメじゃないか」 パッと声の方に顔を向けた。 裏庭に面した教室の一室からよく知る2人が 窓から顔を出している。 「ツキ先輩、クワ先輩!」 同じ放送部の先輩だ。 「声が大きいぞ、コン」 ツキ先輩に窘められた。 「あ、すみません」 声量を調節する余裕すら僕にはなかった みたいだ。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加