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空になった弁当箱を手早く片付ける。
ここにいるのは限界だった。
「僕、用あるんでもう行きますね。
先輩方ゆっくりしてって下さい」
そう言って立ち上がると、松崎先輩は少し
焦ったようにこちらを見た。
「え、おい、待てよ」
「へぇ、そうなの?もっと森野くんとお話し
してみたかったんだけど、残念だなぁ。
…また、一緒にご飯食べようね?」
「ええ、楽しみです」
白々しい宇野先輩の言葉。
僕はお返しに上辺だけの笑みを。
「じゃあ、また」と2人に背を向けて
足早にその場から離れる。
膨れる悶々とした思いを抱えながら。
…
裏庭を歩きながら、溜め息を吐く。
心配と不安で胸が張り裂けそうだった。
(だってすごく仲良さそうだったし、2人
とも名前呼びだったし)
もしかしたら、という不吉な思いが僕の
こころを埋め尽くす。
「あれ~コンじゃん。そんな暗い顔して
どうしたのォ?」
「おい、コン。一人でこんなとこ歩いて
たらダメじゃないか」
パッと声の方に顔を向けた。
裏庭に面した教室の一室からよく知る2人が
窓から顔を出している。
「ツキ先輩、クワ先輩!」
同じ放送部の先輩だ。
「声が大きいぞ、コン」
ツキ先輩に窘められた。
「あ、すみません」
声量を調節する余裕すら僕にはなかった
みたいだ。
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