エイプリルフール

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ー白、桃、赤。桜の前に咲く桃の花。 風に乗って届く春の匂い。 陽の光からも心地よいこの季節がやって きたことが分かる。 (良い天気だなぁ) 青空が広がる空を眺めながら、昔懐かしい 曲を思わずハミング。 軽い足取りで俺は生徒会室の扉を開けた。 真っ先に目に入ったのは、俺の恋人の 後ろ姿。自然と頬が緩む。 その後に部屋を見回したけど他の人の気配 は無かった。 「あれ、柊だけ?」 「あぁ」 こっちも見ずに彼は応える。 彼の基本的にクールな性格は付き合った 今でも変わることはない。 「ひ、い、ら、ぎー」 構って欲しくて後ろから彼の首に抱きつく。 艶やかな黒髪と、愛しいつむじに キスを落とした。 「天宮、邪魔だ。あと苦しい」 非難の声が彼からあがる。 それでも抵抗するわけではなかったから 人目も無いし、存分に彼を補給しようと 身を寄せた。 「ー好きだよ、椎名」 耳もとで囁く。そうすれば、ほら。 君はいつだって耳を真っ赤にして、俯いて 「…俺も」って…… (ん?あれぇ?) 彼の様子が何か変だ。 前に組んだ手に水滴が落ちた。 思わず天井を見上げる。雨漏りは、ない。 外を見る。晴天だ。 下を見る。 俯く彼の肩が弱く震えていた。 -
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