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そいつは圧倒的な力でバッタバッタと
生徒を倒していく。なんだんだコイツは。
雨に濡れた髪から水滴が顔に落ちたり制服
がびしょびしょになるのもほっといて
急に出現した男を呆然と見ていた。
「ー平気、デスカ」
ハッと気付いた時にはもう俺を襲ってきた
輩はいなくなっている。この人が助けて
くれたのだ。お礼を、言わねば。
「…すまない。助かった」
バツの悪さで顔は見れない。会長とも
ある人が生徒に助けられるなんてあっては
ならないことだから。
恩を売ってしまった。脅されるかも。
ぐるぐると最悪の事態が頭を駆け巡る。
だけど、彼から返ってきたのは
「はぁ」
気のない返事だけだった。
俺はおもむろに顔をあげる。
(あぁ、なんてこった)
「まったく、世話が焼けますね」
雨に濡れた前髪をかきあげて、俺に手を
差し伸べながら平凡野郎は笑って言った。
ドッキュン。
俺の心臓が変な音をたてて壊れる。
雲の隙間から光が差し込んでいる。
雨は、もうすぐ止みそうだ。
end
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