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…
「なにこれ」
「おら、もたもたすんな。早く準備を
始めんぞ」
彼の部屋にやって来た。何度も来たことが
ある。ほとんど物がなく生活感すら無いと
思うほどの部屋だった覚えがあるのだが
今日は様子が違った。
床に広げられた何着かのドレスとセットに
なった靴とかアクセサリー。
机の上にはウイッグや箱が置いてある。
「え…誰の?」
「俺の」
まさかの私物。
「そういう趣味あったっけ?」
問答無用で殴られた。
「親が美容系の仕事してんだよ」
だからって陽介の部屋にこれがあるのは
おかしくね?もう深くは聞かないけども。
怖いから。
陽介はドレスを手に取る。
一つは黒でもうひとつは淡い水色のやつだ。
「まぁ、だいたいイメージは決まってる
から…ほら、これ着てみろ」
まず水色の方を押し付けられる。
「…はい」
もうつっこむのはやめようと
大人しくそれを受け取った。
***
「…我ながら完璧」
漏れる息で彼が呟いた。
陽介にされるがままに服やら靴やらを何度
も試着し、ウイッグを被りそれをカットし
化粧をし。というかこいつ平然と 1人で
こなしてたけどポテンシャル半端ねぇな。
「でけた?」
「ほら、鏡見て来い」
部屋の隅に壁向きにされてる全身鏡が
置いてあった。動かして、こちらの姿が
映るようにする。
そして鏡に映った自分の姿をまじまじと
見た。
「うわ」
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