Shall we dance?

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控えていたオーケストラの人たちが ぞろぞろと会場に入ってくる。 ステージのように一段高くなっている ところにその全員が並び終わった。 食事をしていた生徒や、友達とお喋りを していた生徒もペアと合流してホールの 中心へと集まってくる。 ーそのうち、ゆっくりと演奏が始まった。 タキシードを着た彼らは跪いて パートナーに向かって手を差し出す。 その手を取るのが合図となって、踊りの 輪に加わってく。 なんて素敵!顔面偏差値が高いだけあって その様子が絵になること。 またその光景を見ていた陽介が 「なるほど」と呟く。 「陽介はやらないでいいよ…っておい」 言ってる最中に、彼はゆったりと床に跪く。 恭しくこうべを垂れて俺の前に手が差し 出された。 なんだか、その動作だけでも優雅で 手慣れているように思える。 「私と、踊っていただけますか」 変に畏まって彼が言う。 私、だって。笑っちまうよ。 「…えぇ、よろこんで」 陽介にならってどっかの令嬢をイメージ しながら彼の手に自分の手をそっと重ねる。 いつも一緒にいすぎて忘れてたのか。 周りの視線に感化されたのか。 陽介を見て色めき立つ人たちの気持ちが 理解できた。 彼は俺の手を握ると立ち上がる。 腰に手が回った。そして惹かれ合うように 自然と目が合う。彼の口元がふっと緩んだ。 ーなにこのロマンチックムード。 イベントマジック怖ぇぇぇ。流される。 俺たちそういうのじゃないもんね。 俺が萌えイベントを見るために、陽介が 仕方なくついてきてくれただけだもんね。 危なく錯覚に陥りそうになる。 -
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