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「…なんだよォ」
陽介なんてもう知らない、だ。
俺の乙女心を弄びやがって。
彼に本音を聞きたくて。だけど聞きたく
なくて。あぁ、ジレンマ。
(おとなしく授業なんて受けてる場合
じゃないんだぜ)
日頃は真面目な俺だけど、お気に入りの
BL小説を持って教室をとびだした。
…
古い匂いがする。シンと静かで誰もいない。
そんな落ち着くのにピッタリな場所。
「ビバ、図書室!」
奥の方に置かれたふかふかソファに
倒れこむ。陽だまりの匂い。
「ふはぁ…」
(極楽ってこういうこと)
陽介のことなんてどうでもよくなる
くらいだよ。ちぇ、あいつめ。
開いた窓から風が入って、パタパタと
カーテンを揺らした。俺の髪もそよそよと
そよぐ。
折角本を持って来たのに、なんだか眠く
なってきた。睡魔は抗う時間を俺に与えず
瞼を落としてくる。
しょうがなく本を横に置いて、睡魔に身を
任せることにした。
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