停電

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知らない生徒と楽しそうに話している彼を 俺は椅子に座って眺めていた。 「辻ちゃーん、なに見ーてるの。 実行委員長がサボってちゃダメでしょうが」 違うところで作業をしていた綾瀬が俺の隣 に立つ。窓ガラスに寄りかかった。 夏真っ盛り。窓を閉め切るには熱いけど 外はザーザー降りで時折雷が鳴っている そんな夕方。 学園祭実行委員である俺たちは学園祭に 向けての準備を進めていた。 「ん、いや…」 視線を彼から逸らし、綾瀬に目をやった。 俺の視線を追っていた彼。 「あぁ」と呟く。 「”城山くん”か」 バレてる。 「一見爽やかそうだけど、時々すっごい 色っぽい表情をするって先輩たちからも 評判ですヨ」 見透かすようにそう言って笑う。 「そうですか」 こっからでは後ろ姿しか見えないけれど。 色気のある綺麗な背中。 触りたい。 「辻井ー!先生が呼んでる」 廊下の方から声が掛かった。 「今行く」と答え、城山の横を通り過ぎる。 意識しないようにしようとしたのに視線は 自然と彼に向かう。 そして、スローモーションのように 彼も同じように首を動かすのが見えた。 -
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