善き哉

2/5
前へ
/310ページ
次へ
おい、と声をかけられ書類から目を離す。 会長が紙を持って、机の横に立っていた。 「活(いくる)。転校生の出迎え、お前担当に したからな」 「…ハ?嫌だよ。めんどくさい」 「いつも通りあたりざわりなく笑顔で やれば良いだろ。その点じゃお前が1番 適任なんだよ」 ほら、とその紙を押し付けられる。 「うげぇ…」 いやいや受け取り、しょうがなく目を通し 始めた。 ーーーーー 時間通りに門の所に行くと、既に1人の 生徒の姿があった。小走りで彼の元へ急ぐ。 「早いね。待ったかい?」 「…いえ」 短く素っ気ない返事。 気にせず笑顔で話を続けた。 「それなら良かった。僕は副会長を やってる、谷川活。君の案内役です」 「…新見 善です」 ぺこり、と頭を下げた彼。 顔をあげると彼の綺麗な黒髪が舞う。 ツルンとした白い肌。 伏し目がちな瞳。低めの鼻。 顰められた眉毛と、長めの前髪。 キュッと引き締められた厚めの唇。 僕より少し背が低いくらいだから 170センチ前半だろう。 こちらの顔を見ないことを良いこと にそこまで彼の顔を不躾に観察する。 (悪くないけど、良くもないな。 もっと愛想が良ければいいのに) 失礼なことを心の中で思う。 -
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加