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「新見くんだね。よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
彼はまた数センチだけ頭を下げた。
相変わらず無表情。
(本当にこいつ、ニコリともしないな)
思わず笑顔が引き攣った。
ーーーー
「新見くんは、なんでこの学園に
通うことになったんだい?」
理事長室に向かう間にコミュニケーション
を図ろうと努力する。もくもくと俺の横を
歩く彼。
「…親の都合で」
一言、ポツリと返される。
ふーん、そっかぁ。と相槌を打った。
話が続かない。ちっともこっちを見て
くれない。僕から見えるのは俯き加減の
彼の顔だけ。
「えと…転入試験難しかった?」
「そんなに」
「頭良いんだね。ここ、結構レベル
高いでしょう」
「へぇ」
「…」
会長。僕、帰りたいのですが。
ハァ…と溜め息が出そうになったその瞬間
足が何かに引っ掛かった。
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