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あ、もしかして。
「善くんは、人見知りだったりする?」
「うん、そう!でも活さんはもう大丈夫」
転けてくれたから、と言ってまた笑う。
きゅーん。
これが怪我の功名ってやつか。
…
「ここが理事長室だよ」
それから話も弾み、彼は表情がコロコロ
変わるのだと分かった。とても可愛らしい。
ここで別れるのが残念でならない。
「ありがとう、活さん」
心なしか名残惜しそうに言うのがまた
堪らなかった。
「じゃあ、また」
「また活さんと話せる?でも、あんまり
話しかけちゃだめなんだもんね」
斜め下から上目遣い。胸が高鳴る。
信じられない。まさか僕は。
「ねぇ、活さん。少ししゃがんで」
唐突に彼が言った。「え、うん」訝しく
思いながら言う通りにする。
そして、一瞬目の前が真っ暗になった後に
可愛らしい音。唇に感触。良い匂い。
ーパタン。
目を瞬く間に彼は理事長室に消えていて。
伸ばした手は宙をかいた。
「ヤリ逃げかよぉぉ」
いつのまにか営業スマイルを忘れてた僕の
答えを聞かずじまいですか。
(『どうだった?転校生』
『…ハンターだった』)
大事なものを盗まれました。
end
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