治療なんかほっといて

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「宮原センセー。体育で転けた」 体に関するポスターが所狭しに 貼ってある白い引き戸を開ける。 返事は返って来ず、目に入ったのは 窓際にある机に突っ伏している白衣の人。 「…寝てやがる」 仕事中だろうが。生徒がほとんど来ない からって自由すぎる。呆れて肩を竦めた。 外ではまだ体育が続けられていて 青い空の中、グラウンドで白い体操服を 着たクラスメイトたちがボールを追いかけ 走っている。傷を思い出し、ピリリとした 痛みがはしった。 (手当てをしてもらはねば) そう思い、先生を起こそうと近付く。 気持ち良さそうな寝息を依然とたてていた。 彼の顔の位置に合わせ しゃがむ。 「宮原せーんせ」 声を掛ける。起きない。 「宮原先生、朝ですよ」 声をかけて肩を叩く。起きない。 一つ息を吐く。 「…タケちゃーん」 やっと彼の肩がピクリと動いた。 「ん、…みつ?」 寝起き特有のかすれ声で呼ばれる。 薄く開かれた瞳。先生の綺麗な顔が ゆっくりと俺に寄せられた。 (あぁ、寝ぼけてるなこの人) そう思いながら黙って彼のキスを 受け止める。 名残惜しいけど、続きはまた。 こほん。声を整える。 -
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