狼と犬って紙一重2

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体育館に集まった大勢の生徒。 声を揃えてカウントダウンをしている。 3、2、1… 0を告げる笛の音と共に、戦いの幕が 火花を切った。 『追いかけっこ、スタート~!!』 … 「おい観月。早く行くぞ!」 頭に細長い白い布を巻いた小宮山が パッと後ろを振り向いた。 「ごめん、僕走るの苦手なんだ」 同じような布を手首に結ぶ彼は ジョギングくらいのペースで小宮山 の後に続いている。 「たっく…足手まといだな」 またその後ろを、肩にまわしただけ の布を揺らしながら馨が早歩きで ついていく。 「海斗は確実に狙われるだろうから 一人で行動するなよ」 「分かってるって!でも、なんかあ ったら馨が守ってくれるだろ?」 馨は目元を緩ませてそれに答えた。 「…あ、もう五分経った」 ふと、腕時計を見た観月が呟く。 五分経つと鬼たちがスタートするのだ。 「やべッ!ぜってー逃げ切ってやる んだからな。森の方いこうぜ!」 「え、おい!待てって…」 馨の制止を聞かず、彼の姿が森の中へと 消えていく。 馨は溜め息をついた。 「…観月様。アレ、どうします?」 「追いかけて。”三波馨”はあいつに ぞっこんなんだから」 「でも観月様が、」 「僕は今は平凡な1生徒の”霧島観月” だから、平気です」 「…分かりました。本当に気を付け て下さいよ」 「心配性だね」 観月は苦笑しながら、わざとらしく 肩をすくめた。 -
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