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馨と別れた観月は、校舎の中へと
入っていった。階段を上って、どん
どん上へとあがっていく。
やっと薄暗い空間の中に、扉のある場所
まで来た。屋上だ。
一般には解放されておらず鍵がかかって
いる。観月はポケットの中に手を突っ込む
と何かを取り出した。
ジャラジャラと音を立てるそれは鍵の束。
その一つを鍵穴に差し込むとカチリという
音がする。
ドアノブを捻ると、風がすり抜け光が
漏れ空がひらける。
観月は眩しそうに目を細め、足を踏み
出した。後ろ手にドアを閉める。
「あれ、平凡くん」
突然、声が降りかかった。先客が
居たようだ。上を観月は仰ぎ見る。
「…鶴見会計」
赤みのない茶色に染められた彼の髪
が舞う。
面白がるように、観月に問うた。
「鶴見のどっちだと思う?」
「弟」
観月は間髪もいれずに答える。
彼は満足そうに笑った。
「せいかーい」
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